ファルク中尉率いる小隊は、未確認のジオンMSに翻弄されていた。
「く・・・。速過ぎる!パースで戦ったBD-01並みかそれ以上だ」
ガトリングガンで相手を牽制しつつ、ガンキャノンのロングビームライフルで攻撃する作戦を立てたのだが、ガンキャノンのシュートレンジから一気ににげていく為に思うように相手を捕まえられないでいた。そして、相手を追い込むつもりが逆に追い込まれてしまったのだ。
「中尉!このままだとジリ貧です!何か策はないんですか!?」
懸命に照準を合わせながら、ガトリングガンを撃っている寒冷ジムから無線が入る。
「キョウスケ、コイツから逃げるのはまず無理だ。俺の勘が正しければ、奴は強襲用のMSだ。そこらのMSとは瞬発力が桁違いだからな」
ガンキャノンのコクピットで敵を観察しながら、必死に策を練っていた。
「接近さえされなければ、何とかやり過ごす事は可能だろう。だが、時間がない」
そう、時間がないのだ。夜間に突入すれば、まず相手の思うがままになってしまう。
そもそも強襲とは相手に悟られずに襲い掛かる攻撃なのだ。だから、相手が認知出来なければ、一方的な攻撃が可能なのである。
「こうなったら、小隊で奴をぶちのめすしかない。一気に一斉射撃して、奴の足を止める!」
ヒットアンドウェイで様子を伺っていたケンプファーだったが、相手の小隊が一斉に隊形を組み直したのを見て、少し驚きの表情を見せる。
「ほう。やっと覚悟を決めたようだな。連邦にも少しはやる奴が居ると聞いたが本当みたいだな。良いだろう、ケンプファーの実力を身をもって知るがいい」
ショットガンに弾を装填して、一気に接近していく。
「まずは出来損ないのジムから始末させてもらう!」
一気に目の前に迫る赤いMSを見て、カッパ軍曹は不意に口走る。
「奴だ・・・。赤い彗星のシャアだ!」
その一言が彼の最後の言葉になった。
目の前で炸裂するショットシェル。その弾丸の中には数百発の鉛玉が入っている。それを至近距離で食らうと一溜まりもない。
「カッパ軍曹!逃げろー!!」
その「命令」も虚しく、ジムは沈黙してしまう。
「まずはひとつ!」
すぐさま、照準を切り替えて寒冷ジムとガンキャノン目掛けて、突っ込んでくる。
「う、うわ!く、来るなー!」
錯乱状態に陥るキョウスケ・ナンブ軍曹。だが、ガトリングガンを連射していた為に、ショットガンの餌食にならなかった。

左肩のショルダースパイクの直撃を受けて、寒冷ジムが吹っ飛ばされる。その拍子でナンブ軍曹は頭をコンソールにぶつけてしまう。しばらく朦朧としていたが、やがて意識が途切れてしまう。
「おい、しっかりしろ!キョウスケ!!起きるんだ!死ぬぞ」
何度、無線で呼びかけても反応がない。
「こいつ!一体、なんなんだよ!!」
怒りに燃えてケンプファーに攻撃をする。だが、射撃速度が追いつかない。
数分後、キョウスケ軍曹は目覚めるのだが、思いがけない展開になっていた。
なんと、ガンキャノンがあの強襲MSを押さえ込んでいたのだ。
「え!いつの間に!?」
気が付いたキョウスケ軍曹はファルク中尉に無線を入れる。
「やっと気が付いたか。何度呼びかけても答えなかったから、心配したぞ」
ケンプファーを羽交い絞めにしながら、余裕たっぷりに答える。
「だが、そろそろガンキャノンの稼働時間も限界だ。キョウスケ、お前はカッパ軍曹をMSから引っ張り出して、パースに戻れ。こいつは俺がやる」
「やるって・・・。その体勢からどうするんですか?」
ガトリングガンの残弾をチェックして照準をケンプファーに合わせようとする。
だが、ウェポンコントロールシステムが壊れてしまっていた。手動で照準を合わせるのは無理だった。
「お前の機体は戦闘不能だ、動くのがやっとのはず。俺に構わずカッパ軍曹を探して来い」
そして、意を決したようにガンキャノンのキャノンが上を向く。
それを見た、ナンブ軍曹はすぐに察知する。
「まさか、そいつと自爆するつもりですか!?止めて下さい!」
「悪いな・・・。俺の機体も実はボロボロなんだ。もう動くのも精一杯さ」
よく見ると機体のあちこちにショットシェルが撃ち込まれている。
「よく見ておけ、ジオン兵士よ!この地球はお前等の好き勝手にはさせない!連邦を舐めるなよ!!」
「中尉ー!」
ガンキャノンから砲弾が発射された後、必死にもがくケンプファーだったが、砲弾の直撃は免れなかった。
黒い黒煙が上がったと思うと、すぐに爆発が起きた。ケンプファーとガンキャノンが炎に包まれる。だが、その爆発からケンプファーが起き上がる。
「くそ!味な真似を!私の機体に傷をつけるとはな。ここは下がらせてもらう」
立ち上がったケンプファーは右腕と頭部を破壊され、戦闘できる状態じゃなかった。
それでもスラスターは生きていたので、寒冷ジムの視界から消え去るには十分だった。
一方、ファルク小隊が壊滅した頃、援軍として到着した対MA部隊がニューマンに到着していた。
「いよいよ、夜間戦闘か・・・。遊撃している連中には悪いが、MAを撃破して内部に突入せんとな」
「キリシマ大尉、前方に巨大な反応を確認。その他にMSが1機。敵はまだ気付いてないと思われます」
「よし!スフレ中尉は前衛に立って、敵MAの撃破だけを考えろ。俺とパワードは側面から奴の足を止める」
「了解しました。全力で破壊を実行します」
「各機、散開!」
「そろそろ夜間です。MAを一旦下がらせましょう」
グスタフの状況チェックをしていた、技術仕官が提案してくる。だが、MAパイロットは拒否する。
「やつらは闇に乗じて、必ず侵入して来る。それを防がねば、我らに勝利はない」
MAパイロットの決意が固いと知った技術仕官は渋々、内部に戻って行く。
だが、ジオンの警戒を嘲笑うかのように連邦は既に侵入していたのだった。
「陽動が目的なのに、勝手に内部侵入しちゃって、いいんスカね?」
本来の目的は陽動だったが、思うように戦果が出ていないので、命令無視しての「突入」である。
「ジオンだって、まさか地図に載っていない100年前以上の水路から侵入して来るなんて思ってないさ。これがホントの「奇襲」って訳さ」
軽口を叩いていた2機だったが、ジオンのMSが待ち構えている事を知らなかった。
そして、夕日も落ちて連邦・ジオンともに地獄の夜間戦闘が幕を開けたのだった。
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