スフレ中尉がサザンクロスHQに持ち帰ったサボテンの花から、ジオンの拠点があると思われる地点を中心に、捜索が開始された。その間にも散発ながらもジオンとの戦闘があったが、有力な情報が掴めないまま、2日が過ぎた。
その間、パースとサザンクロスの合同部隊が結成され、訓練に明け暮れていた。
戦端を開く切っ掛けとなる部隊は陸戦型ガンダム3機で編成される第1小隊に決まった。
本来はオセアニア方面軍には配備される事のない陸戦型ガンダムであるが、先のBD-01暴走の末、陸戦型ジム3機の小隊が壊滅するという事態に陥った為、残り2機が配備される事になった。この時点でビームライフルの支給は間に合わず、従来の装備で配備が決定されたのである。
また、カドマツ少尉の乗る「ジム」は作戦に支障が出るという事でジャブローより特別にMSを支給してもらっていた。
「へ~。これ、ジム・コマンドなの?なんだかカスタム化されてるけど・・・。」
支給されたMSの整備は朧商会でやっていた。

「お?来たか。これがお前さんの新しいMSだ。大事に使えよ」
カドマツ少尉に声を掛けたのは朧商会のアフロマスター・朧だった。
なぜ、急に「アフロマスター」になったのか?オリジナル(自毛)がなくなってもアフロを愛するその姿勢に一部の兵士が愛嬌と尊敬の念を込めて命名したからである。
「ちょ~とばかり、改造しておいたぞ。エンジンはロケットエンジンのままだが、地上用にデチューンしてある。加速は鈍いが小回りの効くMSになっている。少し訓練しないとどうにもならんぞ」
朧メカマンの改造自慢はさておき、装備はジムライトアーマーのビームライフルを流用している。本来、ライトアーマーに支給されているビームライフルは射程が短いが、それを補って火力はマシンガンの数十倍の威力を誇る。故にジオン軍がジムの中でも恐れているのだ。そして、頭部のバルカンを廃止し、供給タイプのバルカンポッドを装備している。これにより、戦場での弾薬補給がスムーズになった。しかしながら、弾詰まりしやすいというデメリットも持ち合わせている。そして、最大のポイントは何と言ってもロケットエンジンを積んでいることである。要するに宇宙用のジム・コマンドなのだ。
だが、デチューンすることで、出力を抑えた機動性重視の俊敏さを得る事が出来た。当然ながらAMBACは並のジム・コマンドよりも優れている。
朧メカマンの忠告を素直に聞いたカドマツ少尉は、ベッピン少尉とカッパ軍曹に訓練を依頼した。
「何気にカッコいいな、そのジム・コマンド。俺のと交換しない?」
カスタマイズされたジム・コマンドを見て、無情にほしくなったベッピン少尉だが、訓練は手を一切抜かなかった。
「手合わせしてみたけど、予想以上にAMBAC高いな。やっぱ、エンジンの性能が左右されるんだな」
支給されたMSは基本的にカスタマイズは禁止になっている。というのも、余剰パーツが大量にないからである。その為、エンジンだけを換装して出撃するというケースが多いのだ。
一瞬の隙を付いて、背後からカッパ軍曹のジムが照準を合わせる。
だが、それすらも容易に避ける事が出来た。
「マジで、あり得ねぇ機体だ・・・。味方であって本当に良かったな。ジオンが可哀想に見えてきたよ」
そして、ファルク・ホーガン中尉率いる部隊も訓練していた。
「いいか、キョウスケ。俺達はあくまでも支援がメインだ。だが、近接する為、ジオンと交戦することが予想される。」
「そこで自分のジムが前衛に出て、ガンキャノンを逃がすパターンになるんですね?」
「うむ。お前の機体性能なら十分逃げる事が出来る。だが、決して敵を追い込むことは禁止だ」
「なぜです?」
「判らないか?我々は支援が目的なのだ。変な英雄意識や戦績を挙げようなどと欲を張れば死ぬぞ。勝手な行動が小隊の全滅にも繋がるんだからな。肝に銘じておけ」
「了解であります。中尉殿」
ファルク小隊は近接支援が任務だが、ガンキャノンでは至近距離での戦闘は苦手である。そこで急遽、寒冷ジムを護衛にしたのだ。
また、スフレ中尉の機体チェックも最終段階に入っていた。
「スフレ中尉、多目的ビームキャノンの調整はどうだ?」
キリシマ大尉が興味津々で聞いて来る。
「非常に威力あるわね。並のザクなら一発でぶっ飛ぶわよ。ホント、恐ろしい武器を開発したわね・・・。そんなに気になるなら実感してみる?」
冗談まじりにキリシマ大尉に銃口を向ける。
「バ、バカ!俺はまだ死ぬわけにはいかん!それにそんな物騒なモノをこっちに向けるな!!」
スフレ中尉は悪戯っぽく笑うと銃口を上に向けた。
「しかし、試作タイプの武器とはいえ、なぜ我々に実験テストを依頼してきたんでしょうね?」
パワードジムに乗り込んだ教導団のメンバーが、疑問を口にする。
「あんまり深く考えるのは止めましょ。どうせ、理由なんかないんだから。それよりも支給されたパワードジムとジム・トルーパーの評価が欲しいんでしょ。だから、こうやって手土産まで付いてくるのよ」
「なるほど、考えてみれば一理ありますね」
ジャブローのモグラどもにしてみれば、兵士は単なる駒である。それ故に、兵士の事よりも兵器の開発などが気になるのだ。
また、単独で別行動をしていたレッタ三等准尉はホバートラックに乗り、ジオンの索敵を密かに行っていた。徹夜でジオンの追跡をしたため寝不足だったが、遂にジオンの拠点らしき場所を探し当てる。部隊編成が済み、作戦が実行されるまで現場待機になった。
そして、11月7日。遂にレビル将軍の元、オデッサ作戦が発令される。
ビッグトレーを筆頭に1個旅団を編成し、コジマ大隊からも応援が到着し、第13独立戦隊(通称ホワイトベース)も参加した地上戦における総力戦でもあった。この戦力に対し、マ・クベ率いるジオン軍は立てこもりを画策するも、四方を包囲され脱出がままならない戦況にあった。この窮地を打開すべくマ・クベは水爆を搭載した巡航ミサイルを発射すると脅しを掛ける。しかし、エルランの裏切りが発覚した為に全てが水の泡と化し、オデッサを放棄するのだった。
この作戦において、連邦軍の被害は報告されてはいないが、多数の通常兵器(所謂フライマンタや61式戦車など)が撃破され、その一部が水爆の爆発に巻き込まれた可能性が高い。自己解釈ではあるが、MSを前線にわざと上げないで包囲網を形成したのではないかと推測する。
この作戦が成功し、オデッサ奪還の報告がパースに届いたのは一日遅れの11月10日だった。そして、その報告と共にジャブローから新たな命令が各方面軍に通達される。
パースHQは追撃の任務を受け、サザンクロスの部隊と合同で作戦の準備に入っていた。
「諸君!遂に地球からジオンを追い出す時が来た!先の作戦により、ジオンはオデッサを捨て宇宙へと脱出を図った。だが、まだ地上には残存するジオン軍がいる。本日を持って、ジオン追撃作戦がジャブローより発令された。諸君らの働き如何で戦局が変わると言っても良い。諸君らの健闘を祈る!」
マクドガル中将の激励に続き、アオシマ少佐並びにキリシマ大尉が各部隊の役割を通達する。
「陸戦型ガンダム3機並びにホバートラックを擁する第1小隊は遊撃を兼ねて、敵勢力の威力偵察を命ずる」
この小隊の隊長はジョニー・イズミ中尉である。
「次にガンタンク2機による、遠距離支援部隊は独立部隊とする」
「ジム・コマンド改2機とガンキャノンの複合小隊は第2小隊と呼称し、中距離支援を命ずる」
この部隊はサザンクロス教導団の隊員で編成されている。
「そして、ファルク・ホーガン中尉率いる部隊は第3小隊と呼称し、編成隊員はキョウスケ・ナンブ軍曹とア・ナール・カッパ軍曹とし、敵部隊の陽動を命ずる」
この小隊の隊長はファルク・ホーガン中尉である。
「なお、ファルク中尉はアックスボンバーの使用を禁止する」
この通達に笑いが起こるが、当の本人は気にしていなかった。
「最後になるが、ベッピン・ゲイ・ブレード少尉率いる部隊は第4小隊と呼称し、敵勢力の掃討を命ずる。厳しい任務となるが遂行を期待する」
ベッピン少尉と一緒に地獄めぐりをするハメになったのは、ケン・カドマツ少尉とアレン曹長である。
なお、レッタ・アーウィング三等准尉は別命で行動している為、今作戦には参加しない。
「以上で部隊編成を終了する。作戦開始は0930時だ。各自、出撃の最終チェックを怠るな」
1時間ほどのブリーフィングではあったが、さほど苦にはならなかった。
いよいよ、連邦の大反撃が始まる。パース近辺で隠密偵察していたジオンの部隊は慌てて拠点に戻る。
「ま、まずい!我々の拠点が見つかったらしい。すぐに戻って防戦の準備を報告せねば!」
慌てて踵を返すザクスナイパーとドムトローペン。だが、その後を追跡するコアファイターに気づいていなかった。
オデッサ作戦を境にいよいよ地上戦線は佳境に向かう。
連邦もジオンも戦力を宇宙に向けるが、地上戦線の終戦は未だ見えなかった。
時に11月11日。オセアニア地区の総力戦が幕を開けたのだった。
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